口腔機能低下症とは
口腔機能低下症とは、加齢やその他の要因により、口腔の様々な機能が低下する状態を指します。口腔機能は、食事や会話、呼吸など、日常生活において重要な役割を果たしています。口腔機能が低下すると、咀嚼(そしゃく)、嚥下(えんげ)、発音などが困難になることがあります。
当院では、口腔機能低下症の予防と治療に力を入れており、定期的な検診や専門的なケアを通じて、患者様の口腔健康を維持・向上させるためのサポートを行っています。口腔機能に不安を感じる方や、ご家族の中に同様の症状が見られる方は、どうぞお気軽にご相談ください。
口腔機能の役割
お口にはさまざまな役割があり、中には何気なく使っている機能もあります。主な口腔機能としては、以下のようなものがあります。どれかひとつでも口腔機能が欠けてしまうと、食事や体調に影響を与え、生活に支障をきたす恐れが出てきます。
① 摂食・咀嚼
食べ物を噛み砕き、飲み込みやすい形にする機能です。適切な咀嚼は消化を助け、栄養吸収を促進します。
② 嚥下(えんげ)
食べ物や飲み物を安全に胃まで送り込む機能です。この機能が低下すると誤嚥のリスクが高まります。
③ 発声
言葉を発し、コミュニケーションを取るための重要な機能です。明瞭な発音や会話を可能にします。
④ 唾液分泌
口腔内を湿潤に保ち、食べ物の味わいを感じやすくします。また、初期の消化や口腔内の自浄作用にも関与します。
⑤ 呼吸
口呼吸の際に重要な役割を果たします。鼻呼吸と合わせて適切な呼吸を可能にします。
こんな症状に気がついたら
「口腔機能低下症」の可能性があります
- 食べ物が口に残る
- 食事中にむせる
- 固い物が食べにくい
- 食事の時間が長くなった
- 飲み込みにくい
- 口の中が乾く
- 食べこぼしが増えた
- 滑舌が悪くなった
- 口臭が気になる
当院で行う口腔機能低下症の診断
下記7検査の中で3項目以上にマイナス評価がある場合は、口腔機能低下症と診断されます。
口腔乾燥検査
口腔水分計は、たった2秒間、舌の粘膜に触れるだけで、口の中の水分量を測定できます。測定結果により、粘膜の状態をレベルサイン1からレベルサイン5までに分類することができ、測定値29未満のレベルサイン1~3までは乾燥状態と診断されます。
口腔内細菌検査
口腔内細菌測定器で口腔内の虫歯菌の数や歯周病菌などの細菌の数を測定します。この検査により、虫歯や歯周病の可能性、口腔内がどこまで汚れているかなどを診断できます。細菌の数によって評価レベルが7段階に分かれており、レベルに合わせて歯磨きの指導やクリーニングを行っています。
舌口唇運動検査
口唇・頬・舌の動きを検査します。「パ」「タ」「カ」の発音を5秒間で何回できたか計測します。 1秒当たり6回未満で異常です。
舌圧検査
舌の力(舌圧)を測定します。口腔機能検査の中で最も大切で重要な検査です。 専用計測器を用います。30kpa未満は異常です。
口唇閉鎖力検査
測定器を口唇と前歯の間に挟みギュッと唇を閉じていただきます。測定器の ボタンに付いた糸を引っ張って、お口からボタンが外れた数値が、口唇閉鎖力として示される仕組みです。6N(ニュートン)は最低必要な値で、目標は10Nと設定しています。 ※この検査は小児のみ行います。5N以下の診断結果は発達不全症になります。
咀嚼機能検査
専用のグミを噛んで砕き、その砕けた細かさや唾液で分解された糖分などを計測し、どのくらい噛めているのかを調べます。 専用測定器を用いて100㎎/㎗未満は異常と診断されます。
自記式質問票(聖隷式嚥下質問紙)
専用の嚥下機能に関する質問紙にご記入いただき、スコアによって嚥下機能の状態を評価します。15項目のうちAの項目が3つ以上で嚥下機能低下と診断します 。
診療の流れ
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検査・診断
以下の7項目の口腔機能低下症の検査と診断を行います。
・口腔不潔 ・口腔乾燥 ・咬合力測定 ・舌口唇運動機能測定
・舌圧測定・咀嚼機能測定・嚥下機能低下 -
管理計画の立案
検査結果に応じて、一人ひとりに合った予防・リハビリメニューを立てます。
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管理計画の患者等への説明・同意
患者様への検査結果の報告と、具体的な予防・治療計画の説明を行います。
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口腔機能低下症の管理
予防・治療計画に同意していただいた場合、機能訓練の指導、生活指導、栄養指導などを行い、口腔機能低下症の対策を行っていきます。
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再評価
改善が見られたかどうか、診察と検査を行い、再評価と再指導を行います。
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継続管理
再評価後も継続して予防・治療を行っていきます。